20世紀のタフな男を象徴するアイコン
“カウボーイ”は現在でも営まれているれっきとした職業ではあるのだが、彼らが身に着ける伝統的な道具や言語、服装、そして生活様式は西部開拓時代、つまりアメリカ人のルーツを思い起こさせる特別なヒロイズムがある。「101‐LJ ストームライダー」。そのネーミングには、逞しく孤高のカウボーイを連想させる叙情的な響きがあるが、それは優れた機能を物語るのに最も適した称号と言えるだろう。ストームライダーは1933年に発表された前身モデル「ストームカウボーイ」から保温性に訴求する機能を受け継いだもので、1946年にライニングを持たないジャケット「101‐J」やボトムスの「101カウボーイ」とともにスタイリッシュなデザインに刷新され「ライダース」の称号が与えられたリーを代表するシリーズの一員となる。ストームカウボーイから引き継がれた、アラスカンライニングと呼ばれるブランケットライナーとコーデュロイカラーは優れた保温性を持ち、カウボーイがサドルに跨った状態でフィットする裾丈や腕を前に伸ばした際に手首が露出しない長さの袖丈など、運動性に貢献するパターンも熟考が重ねられた。また左右の胸ポケットは手の出し入れがスムーズにできるよう斜めに配置されるなど、まさにカウボーイのベンチワークに理想的な
ワークジャケットのデザインを具現化したものだった。さらにリー特有のレフトハンド(左綾)デニムの色とベージュの襟、ストライプのブランケットとが絶妙なカラーコントラストを生み、そのいでたちは強い向かい風が吹く吹雪の荒れ地を寡黙に進み続けるカウボーイの――そう、1960年代に採用されたタグに描かれた図案のような――姿を想起させるだけの説得力がある。以降、細かな変遷はあったものの基本デザインを変えることなくライニング付きデニムジャケットの名機として、現在も圧倒的な存在感を放っている。つまりそれだけ完成されたデザインであることを雄弁に語っているのだ。創業130周年に特別なストームライダーが誕生した。アーカイヴコレクションと同じく、その姿もまた往年の101‐LJを踏襲している。しかしながら本モデルに使われる素材は、現代テクノロジーの粋を集めた透湿・耐水・防風性、そしてさらなる保温性を付加した、まさに道具としての正常進化を遂げている。20世紀のタフな男を象徴するアイコンであり続けてきたストームライダー。それは時代が変わろうとも揺るぎないのである。



