〈N.ハリウッド〉尾花大輔さんが語るLeeの魅力、
AMERICAN RIDERS の実力

古き良きクラシカルなプロダクトや過ぎ去りし時代にスポットライトを当て、
そこから導き出した新たな価値観をモードファッションへと昇華する〈N.ハリウッド〉。
ブランドを率いる尾花大輔さんは、
アメリカ古着を中心としたヴィンテージウェアへのディープな知識と愛情の持ち主であり、
毎シーズンのコラボレーションなど Lee への造詣も深い。
日本を代表するファッションデザイナーのひとりである彼と Lee との関係、
そして現代のスタンダードを創造する[アメリカンライダース]コレクションの魅力をうかがいます。

尾花大輔さん

N.HOOLYWOOD デザイナー
クリエイティブディレクター

Daisuke Obana●1974年、神奈川県生まれ。高校時代にアメリカンカジュアルや古着を取り扱うインポートショップ、ヴィンテージウェアの名店でアルバイトを始める。ファッション専門学校を中退後、古着店でのバイヤー&ショップマネージャーに。’95年に古着のセレクトショップ『ゴーゲッター』の立ち上げに参画し、’99年よりリメイクやオリジナルアイテムのコーナー展開をスタート。2000年、それらを本格展開するショップ『ミスターハリウッド』をオープンさせ、翌年にブランド〈N.ハリウッド〉を設立。’02年に初のコレクションを発表し、以降は東京コレクション、現在はNYコレクションにてショーを行い、国内外から高い評価を獲得している。
www.n-hoolywood.com

多感な年頃に Lee に触れた経験は
今のクリエイションにも活きている

「初めて Lee のアイテムを手に入れたのは中学生のとき。下北沢で見つけた ’70年代くらいの安い古着のオーバーオールでした。ヴィンテージが格好いいとか、そういった基準ではなく、お金がないので古着以外に選択肢はなかったですね。当時は1980年代の後半で、街のジーンズショップに行くと Lee や大手デニムメーカーの商品カタログが無料配布されていて、皆がその小冊子でブランド名を知り、[ライダース]※1[101]※2 といった商品のネーミングを覚え、そこにアメリカを感じたり、とても影響力があった。そうした予備知識から、古着を選ぶにしても “ Lee ならアリなんじゃないか ” と、ファッションを知らない少年ながらに思った記憶があります。その後も様々な Lee を買いましたが、一番最初のそのオーバーオールは今でもよく憶えています」

※1 [ライダース]……Lee のフラッグシップコレクションに冠されるシリーズ名であり、1940年代中頃より続く伝統のネーミング。

※2 [101]……Lee のフラッグシップモデルとなるストレートシルエットの5ポケットジーンズ、及びショート丈のデニムジャケットに与えられている不朽のロットナンバー。

「高校生の頃、町田にあったインポートウェア&古着の老舗『クラウドナイン』でアルバイトを始めて、アメカジの基礎を学びました。その後、相模大野の有名ヴィンテージショップだった『バケーション』でもアルバイトをしたのですが、そこには希少価値の高い Lee の往年の名作も所狭しと並んでいたんです。17~18歳なんて興味を抱くと無我夢中になれる年齢なので、思いきり影響を受けるし、知識もグングンと吸収しました。そうした多感な年頃に膨大なヴィンテージに触れることができたのは大きかったですね」

時代時代に細かな違いがあり
そうした変遷を辿るのも面白い

「いわゆる三大デニムブランドと呼ばれるメーカーは、ぞれぞれに個性やスタイルが確立されていて、どこが一番ということではなく、甲乙つけがたい魅力を感じていました。それ以外にもストアブランドやマイナーブランドも興味の対象でしたが、三大ブランドは歴史やロットナンバーが比較的しっかりと解明・整理されていたので、覚える楽しさがあり、仲間とも話題を共有しやすかったですね。また看板モデルの[101]ひとつとっても、時代時代でタグやフラッシャーのデザインが移り変わり、ちょっとしたディテールにも差異があるなど、そこから大まかな年代を判別することができ、ヴィンテージ好きの知識欲を掻き立てる面白さがある」

「とりわけ Lee は[101Z][101B]※3 といった5ポケットジーンズだけでなく、ワークウェアの人気も凄まじかった。特にコアなヴィンテージフリークになるほど狂信的なファンが多かった印象です。今でも忘れられないのは、あるマニアの方が[カウボーイジャケット]※4 を250万円で買ったと古着業界で話題になり、Lee の[カウボーイ]シリーズこそが特級に価値が高いという認識が広まりました。ちなみに後々その方は、ヘア オン ハイド ラベルの[カウボーイパンツ]※5 も200万円以上で買われていましたね」

※3 [101Z][101B]……※2の[101]にはフライフロントの仕様が異なる2タイプがあり、ロットナンバー末尾のZ=ジッパー、B=ボタンを示す。加えて、J=ジャケット、LJ=ブランケット生地のライニング付きジャケットもラインナップ。

※4 [カウボーイジャケット]……1931年に登場したLee 初のショート丈デニムジャケット。'40年代中期まで生産され、それに代わって現在まで続いている定番[ライダース101J]の前身となった。

※5 ヘア オン ハイド ラベルの[カウボーイパンツ]……※4と同様、1940年代中期まで製造されていたデニムパンツであり、’30年代の中期以降はヘア オン ハイド ラベル=牛の毛皮を使用したレザーパッチを備える。現在まで続く定番[ライダース101B]の前身モデルにあたる。

「’90年代初期に流行ったキレカジ&デルカジ※6 では、〈アニエスベー〉の黒シャツに、ドットかレジメンタルのネクタイを締めて、ブーツカットのジーンズや〈ラルフ ローレン〉のチノ、足元は〈トニーラマ〉のウエスタンブーツ、そして Lee [ウエスターナー]※7のアイボリーカラーのジャケットを羽織るのが一番格好いいとされていました。自分のなかでは、それがヴィンテージマニアが求める骨董価値とは違い、純粋にファッションとして Lee が受け入れられた最初の記憶。そのあとワークウェアのブームが到来すると、さらに Lee が注目されるようになり、あらゆるアイテムが異常なまでに過熱しましたね」

※6 キレカジ&デルカジ……都内私立校に通う高校生を中心に流行した渋谷カジュアル、いわゆる渋カジから派生したファッションスタイルであり、キレカジ=品の良い “ キレイめカジュアル ”、デルカジ=ファッションモデルの普段着を参考にした “ モデルカジュアル ” の略称。

※7 [ウエスターナー]……牧場で働くカウボーイたちのドレスアップウェアとして1959年に発売されたコットンサテン生地のシリーズ。ショートジャケット、ウエスタンシャツ、5ポケットパンツがカラーバリエーションとともにラインナップされており、その後はアイビーリーガーにも愛された。

ブランド設立当初から18年間
途切れず続くコラボレーション

「 Lee とのコラボレーションは、『ミスターハリウッド』をオープンして2シーズン目が最初。ということは、実際に仕込みを始めたのはショップを始めて間もない頃になるので、まさに駆け出しの僕らのワガママに応えていただいたと思うと本当にありがたい。あの頃は洋服作りのイロハも知らず、ただただ自分のアイデアをカタチにしたい猛烈な熱意だけで、Lee の歴史やストーリー、プロダクトチームの苦労、売れる・売れないも何も考えず、とにかく必死だった。しかも既存のモデルをアレンジするのではなく、イチからオリジナルで作り上げていただき、すごい逸品が完成したと満足していましたし、中高生の頃から古着で見て、仲間たちと語ってきた Lee と一緒にジーンズを作れるなんて夢のようでした」

「以来、現在までの18年間、1シーズンも途切れることなくコラボレーションを続けています。〈N.ハリウッド〉にとって、ここまで長期にわたる取り組みは他にありません。僕らが一緒にモノ作りをするときは歴史考証やストーリーを大切にして、ひとつひとつ調べながら進むのですが、Lee チームに感服するのは、例えば、値打ちのないような’80年代のTシャツの刺繍タグを再現するのにも、いっさい手を抜くことなく、スペシャルなヴィンテージを復刻するのと同じ熱量で真摯に作り込んでくれること。僕自身も若い頃に培ったヴィンテージの知見が活きているし、共同作業を続けるなかで深まった知識もあり、それを高いレベルで共有できる者同士だからこそのコミュニケーションができています」

「こうして長年に及ぶコラボレーションを経て、最近は自分の視野が広がってきたこともあり、もっと自由な発想で Lee を創作してもいいんじゃないかと思っています。意固地にならず、押し付けがましくもなく、肩肘張らずに楽しめるようになってきた。ただ Lee とタッグを組む以上は何らかのカタチで歴史に紐づいていることは絶対条件ですし、そこから完全にハミ出ることはしません。そこから逸脱したら Lee に依頼する意味がなくなってしまうので、自身に課しているレギュレーションです」

[アメリカンライダース]は
Lee の奥深い世界への入口

「 Lee は歴史に基づいた硬派なモノ作りを続けている一方、特にレディースが顕著なように、ブランドロゴやバディ・リー※8 を使用したキャッチーなデザイン、すごくモダンなシルエットも提案されていますよね。そうしたトレンドを捉えた今っぽいアイテムにも、知っている人にはわかる Lee らしさが必ず散りばめられている。それは他のブランドでは成し得ない、ならではのクリエイションだと思います。現代の Lee のスタンダードとなる[アメリカンライダース]コレクションも、一見するとヴィンテージシリーズ※9 と勘違いするほど雰囲気がいい。ですが、いざ脚を通すとシルエットは洗練されていて、昔のものより穿き心地も良く、現代のジーンズとして正当なプロダクトになっている。また裾をロールアップすると、アウトシーム裏のロックミシンの縫製にも、セルビッジを思わせるステッチがあしらわれていたり、洒落心が効いていますよね。価格もこなれているので、Lee の奥深い世界や魅力を知るエントリーモデルとしても優秀ですし、自分も一人の作り手として感心させられます」

※8 バディ・リー……Lee の製品をPRするため、1920年に誕生した店頭ディスプレイ用のフィギュア。ミニチュアサイズの Lee 商品を着用した、カウボーイルックやエンジニアスタイルなど全17タイプの衣装が揃っていた。

※9 ヴィンテージシリーズ……1世紀以上にもわたる Lee の長き歴史のなかでも、主に1920~60年代に生み出されたマスターピースに光を当て、実際に当時の商品や歴史資料を紐解きながら忠実復刻する[アーカイブス]コレクションのこと。

「何より、さすがだと思うのは縫製です。ジーンズを仕立てるうえで生産効率やコストを重視するなら、1種類の糸だけを使い、すべて同じミシン、同じ設定で縫い上げることも可能です。しかし、そうすると平面的でノッペリとした面構えになってしまいます。その点 Lee はステッチの太さや色、ミシンの運針を部位によって何種類も使い分けることで、顔つきに深みや奥行きを与え、表情豊かに仕上げている。目の肥えたジーンズ好きでもない限り気がつかないような細かな仕様ですが、そうしたステッチワークひとつにもデニムのプロフェッショナルだからこその手間暇を惜しまない丁寧な仕事、こだわりが注ぎ込まれている。我々も長年のコラボレーションを通して学んだそうしたノウハウを、〈N.ハリウッド〉のモノ作りにフィードバックすることもあります」

「素材にオーガニックコットンを採用※10 している点も興味深いですね。農薬を使わないことは地球環境へのインパクトを最小限に抑えると同時に、綿花を栽培する生産者への悪影響にも配慮している証。また有機栽培された綿から紡績した糸は、天然のムラ感があるためデニム本来の豊かな表情が生まれます。エコやエシカル、サステイナブルといった昨今重要な課題と、プロダクトの魅力を両立させたモノ作りは、ジーンズのリーディングブランドとして素晴らしい。また Lee はアメリカのブランドですが、あくまでクオリティを優先して全工程でメイド イン ジャパンを徹底し、ポケットの裏地にコットンの原産国から紡績、染色、織布、縫製まで、各工程を担当したメーカーを明記しているのも驚きました。いずれもプライドをもって取り組まれている一流メーカーばかりですし、さらにその履歴をクレジットすることで、それぞれの工場も強く責任を実感して一段と手が抜けなくなり、職人ひとりひとりのモチベーションアップ、ひいては製品のクオリティアップにもつながる。こうして手の内を明らかにしているのは、製品への自信の表れでしょう」

※10 オーガニックコットンを採用……[アメリカンライダース]シリーズのデニム生地には、遺伝子組み換えがされていない原綿であり、ウガンダ産&アメリカ産のオーガニックコットンと、ギリシャ産のコットンのブレンド綿を使用。

頑なな姿勢、今を捉える柔軟性
真摯なモノ作りが Lee の魅力

「10代の頃に Lee と出会い、古着を通してヒストリーに触れ、縁あって18年前にコラボレーションを始めさせていただきましたが、おそらく Lee というネームバリューだけでは、ここまで長期の取り組みにはならなかったでしょう。それは Lee が守るべき頑固なところと柔軟な姿勢を併せ持ち、その偉大な歴史を重んじる一方、新たに進まなくてはならない境地にも真摯に向き合っているからこそ、僕自身も心地のいいスタンスで続けて来られたし、たくさんの愛情を受けてきたと感じています。プロダクトはもちろん、一貫したマジメなモノ作りや先鋭揃いの製作チームも含め、包括して魅力に溢れているからこそ、こうして長く広く Lee というブランドが愛されているのだと思います」

Lee AMERICAN RIDERS

(左から)レギュラーストレート[101Z][101B]、 テーパードシルエット[203]、タイトフィット [205]、ブーツカット[102]、ベルボトム[202]。

Lee の原点を現代に伝える
[アメリカンライダース]

ブランドの偉大な歴史を礎に現代のスタンダードを提案するレギュラーコレクション[アメリカンライダース]には、世界初のジッパーフライジーンズとして1952年から続く[101Z]、前身のカウボーイパンツの流れを組むボタンフライ[101B]といった2種類のレギュラーストレートをはじめ、テーパードシルエット[203]やタイトフィット[205]、ブーツカット[102]、そしてベルボトム[202]からなる6型の5ポケットジーンズをラインナップ。

各モデルごとに、色落ちのコントラストを楽しめる濃紺のダークインディゴ、’60年代に見られた Lee 本来の青みの強い色合いを再現したミディアムインディゴという2カラーのワンウォッシュ、それぞれにユーズド加工を施した計4タイプを用意([202]はワンウォッシュのみ)。さらにオーセンティックな風合いを大切にしたコットン100%のデニムの他、ストレッチデニム、コットンサテンやツイル生地を使用したアイテムなどバリエーション豊富に展開。

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Photo_Shunsuke Shiga
Edit & Text_Naoyuki Ikura