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101ストーリー「ミュージシャンが語るスタンダード 」

Vol.11 TENDOUJI 2020.02.08

LEE(リー)の元祖モデル『101』を現代に伝えていくファッションストーリー。
さまざまな価値観が混在する今、そんな原点的なモデルをスタンダードと所縁の強いミュージ シャンに着こなしてもらうとともに、“バンドの核=スタンダード”について再考。

彼らの紡ぎ出す音楽は、どんなことがベースとなり生まれたものなのか。昔から大切にしてい る原点に立ち返りながら紐解いていきたい。

第11回目は、現在、”東京インディ/オルタナ・シーン屈指の愛されバンド”としてシーンを沸かせる4人組バンド、TENDOUJIが登場。1990年代のグランジやインディロックからの影響を感じさせつつも、ハッピーオーラ全開で色彩豊かな楽曲の数々を世に放つ彼らにとってのスタンダードとは?

「バンドをやろう」なんて恥ずかしくて言えなかった(モリタ)

(左上)アサノ
AMERICAN RIDERS 101Z(LM5101-500)、Marvine Pontiakのストライプシャツ、その他本人私物
(右上)モリタ
AMERICAN RIDERS 101Z(LM5101-500)、O-のコーデュロイジャケット、08sircusのロングスリーブカットソー、CONVERSEのスニーカー

— そもそも、TENDOUJIはどのような経緯で結成されたのですか?

アサノケンジ(以下、アサノ):フロントの3人が中学の同級生で、ドラムが中学の一つ下の後輩。28歳のときにまず3人でバンドを組んで、その半年後にドラムのオオイナオユキを入れました。

— それまでに音楽活動は?

アサノ:バンドやったことないです(笑)。いや、ずっとやりたいっていう気持ちはあって、高校の頃から遊びでスタジオに入ってMONGOL800のコピーを演ったりしてたんですけど、本格的にオリジナル……みたいなのは、幼馴染みなんで恥ずかしくてお互いに言い出せなくて……。

— 恥ずかしい?

モリタナオヒコ(以下、モリタ):恥ずかしいですよー! 中学を卒業してからも、高校、大学とずっと一緒に遊んでて、みんな働き始めた頃に一度離れましたけど、それでも2人とかでは遊んでましたからね。そんな長い付き合いのヤツに「バンドをやろう」なんて恥ずかしすぎ。「アツいな、オマエ」みたいに言われますからね(笑)。

アサノ:そういうのを絶対に許さないようなグループだったんで。

モリタ:”アツい=ダサい”みたいに考える集団だったんですよ。地元がそうだったし、世代的にもそんな感じでしたからね。

アサノ:ただ、明らかにお互いにバンドをやりたがっているのは、10何年ずっと感じてたんですよ。

モリタ:会ったときにバンドとか音楽の話はするんですけどね。ただ「やろう」って話にはならない。

— 楽器の経験は?

アサノ:僕とヨッシー(ヨシダタカマサ)は小学校のときにクラシックギター教室に通ってて(笑)、ギターはなんとなく弾けるくらい。ヨッシーは軽音に入ってたよね?

ヨシダタカマサ(以下、ヨシダ):僕は高校のときにロック部っていうのに入ってて……。

アサノ:ダッセぇ~!(笑)

モリタ:家に姉がいてGLAYの追っかけやってたんですけど、HISASHIモデルのギターを持っていて、それをなんとなく触ったことがあるくらい。人前で弾いたこともなかったので、バンドを始めるタイミングで練習した感じですね。

オオイナオユキ(以下、オオイ):僕は全くやったことがなくて……スタジオに初めて行ったとき、初めてドラムに触りました。

モリタ:だから最初のライブは超怖かったですね。何も分からないんで……。

— TENDOUJIというバンド名の由来は?

モリタ:初めてライブに出るとき、バンド名を決めなきゃいけないじゃないですか? そのとき、俺が中島らもさんの本を読んでいたんですけど、そのなかに”天童寺”っていう登場人物がいたんです。それで、恥ずかしいんですけどコイツらに「バンド名、TENDOUJIでいいかなぁ?」って聞くみたいな。でも、2人は全く興味示さなかったですね。「あぁ、いいんじゃない」くらいの感じ。本当に適当に決めた名前だから何の意味もない。

アサノ:僕ら全員、中学時代はサッカー部にいて、卒業してからも22~23歳くらいまでフットサルやってたんですよ。そのチーム名が”FC柑橘類”だったんですけど、僕はその名前でバンドやると思ってましたからね。

モリタ:それは、俺が絶対にイヤで(笑)……っていうのも、FC柑橘類って当時の日本でいちばん怠惰な集団だと思うくらいヤバかったんですよ。今、バンドを始めて思うんですけど、本当にクソみたいな集団でしたからね。とにかく、人に対してディスりしかしない。「アイツ、才能ない」とか言いながら自分は何もやらない……なのに「オレは天才だから」とか平気で言うみたいな(笑)。そのマインドを引きずりたくなくて、とにかく名前は変えたかったんです。だから正直、バンド名は何でもよかったんですよ。

— 行き当たりばったりな感じがすごいですね……。

モリタ:今でもそうですよ。行き当たりばったりの連続。目標はあるんですけど、それも”何となく”。でも「これに出たいなぁ」とか「あの人と対バンしたいなぁ」とか考えていると、ひとつひとつドタバタしながら叶って、結果、今ここにいる感じですね。

(右上)オオイ
AMERICAN RIDERS 101Z(LM5101-500)、古着のナイロンジャケット、FILL THE BILLのキャップ、DCBA by SON OF THE CHEESEのスニーカー
(左下)ヨシダ
AMERICAN RIDERS 101Z 1954MODEL(LM6601-146)、FILL THE BILLのレーヨンシャツ、その他スタイリスト私物

今、こういうオルタナみたいなことを演ってても、金持ちになる可能性を信じてる(アサノ)

11月6日にリリースされた初のシングル”COCO”は、TENDOUJIらしいポップセンスがぎゅっと詰まった1枚だ。キャッチーで、聴いた瞬間から踊り出したくなるようなポップパンクのタイトルチューンを筆頭に、サイケデリックとガレージを融合させた”Magic Hour”、そしてCyndi Lauper(シンディ・ローパー)の名曲”TIME AFTER TIME”のカバーまで、いずれの楽曲もライブでの盛り上がりを予感させるハッピーグルーヴが満載。それは、彼らが聴いてきた音楽と、幼少期に体感した豊かな時代の姿が盛り込まれたサウンドなのだという。

— この特集はLeeの『101』にちなんで”スタンダード”をテーマにしているのですが、TENDOUJIにとってなスタンダードな音楽は何ですか? メンバー全員が共通して好きなアーティストはいるのでしょうか?

アサノ:The BeatlesとNIRVANAじゃないですかね。あとはDragon Ash。

— 個人個人で好きなアーティストは?

アサノ:The Beatlesは小さい頃からずっと好きでしたけど、それ以外はDragon AshとかTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTが好きで、NIRVANAを聴いたのは20歳くらい。そこからグランジとか洋楽を聴き始めた感じです。

モリタ:ヨッシーが大学の後半くらいから、かなりドープなところに突っ込んでましたね。

ヨシダ:ナオ(モリタナオヒコ)と俺はレコードプレーヤーを買ったので、そこからどっぷりハマったっていうのがあるんですけど、「今、これにハマってる」なんて恥ずかしくて言わなかったですね(笑)。

モリタ:中学のとき、ちょうど青春パンク系が流行ってて、ヨッシーが聴きたいっていうのでCDを貸したんですよ。で、お返しに貸してくれたのがゆらゆら帝国。結構ビックリして「ヨッシー、これ聴いてんの?」みたいな(笑)。

ヨシダ:(笑)。逆もいっぱいありますけどね。ナオがJoy Divisionをいっぱい貸してくれたりとか。

アサノ:そんな話は知らなかったですね。それ、当時俺が見つけたらめちゃくちゃバカにしてるっすね(笑)。

モリタ:本当に好きなものが好きって言えなかったんですよ。Joy Divisionとか、みんなに勧めたいんだけど「へぇ、そうなんだ……カッコつけてんじゃねぇ」って言われるような集団でしたから(笑)。

オオイ:僕はヒップホップ。10歳離れた姉がヒップホップのバンギャみたいになってて、僕に色々聴かせるんですよ。中学時代は先輩が聴いている音楽が後輩に下りてくる感じだったので、青春パンクとかも通過してるんですけど、基本的にはヒップホップばっかり。

クラシック、コンサバ、ストリートにグランジと、ありとあらゆるスタイルに馴染むLeeの『101』。
汎用性の高いストレートシルエットは、サイズ選び次第で、その表情をガラリと変える。

— TENDOUJIの楽曲はそのあたりからの影響が大きいと思いますか?

ヨシダ:グランジ、パンクは大きいかなぁ……。

モリタ:でも、全員共通してポップな音楽が好きだったので、ポップさだけは大事にしてますね。メロディラインがいいものを作ろうっていう。以前、Kurt Cobain(カート・コバーン)がアコギ1本で演ってる音源をヨッシーが貸してくれたんですよ。それを聴いたときに「やっぱり、いい曲ってアコギ1本でもいいんだ」って感じて……。たぶん、それが軸になってると思いますね。あれを聴いたときの衝撃がスゴかったので。

アサノ:曲を作るときはまずメロディですね。ポップスのメロディを先に作っちゃって、そのあとバンドで音を出すときにグランジの方向にグッと寄せていくみたいな。たぶん、当時のグランジ系のバンドがやっていたことに近いんじゃないかと思います。メロディのいい昔の音楽を聴いて、音出すときはガーッと演るみたいな。

— 今回のシングルは、前作に続いて片寄明人(ロッテンハッツ~GREAT3)さんがプロデュースをしていますが、その経緯は?

モリタ:もともと俺がGREAT3を好きだったんですけど、前作”FABBY CLUB”を作るタイミングで「プロデューサーを入れようか」っていう話になって、挙がってきたのが片寄さんだったんです。当時、このチームでは「片寄さんに魔法をかけてもらう」っていうのが合言葉になってたんですが、実際にお会いしたら即座に「あ、この人がいい」って感じでした。デモを聴いてもらうと「ナオ、これやりたいでしょ?」とか「このギター、こうしよう」とか、すぐに分かってくれるし、聴かせてくれる音源も、俺たちが好きな雰囲気をズバッと出してくれるんですよ。

— タイトルトラックの”COCO”を作った背景について教えてください。

モリタ:自分たちの子供の頃、1990年代の初めの頃って、経済的に豊かだったと思うんですよ。そのときに味わっていた空気感がすごく好きで、それをメロディとか曲の雰囲気で出したいなって。俺、その当時のCMが好きなんですけど、そこで流れてるような雰囲気で、かつインパクトがあってパンキッシュな曲を自分たちらしくできたらいいなぁっていう思いが強くあったんですよ。上の世代の人たちはよく「あの頃は良かった」って言いますよね? でも、自分らの時代だってその当時くらいに良くなりたいっていう思いがあって、それがテーマになってますね。

— 例えばどんなCMですか?

モリタ:安田成美さんが出ていたキッコーマンのCMとか。あとは日立グループの「この木なんの木~」のCM。ああいった雰囲気って子供の頃を思い出すっていうか……。まぁ、日立のCMで俺らの曲が流れるとは思わないですけど、そういうノスタルジックな感じを出したいとはいつも思いますね。

ワンウォッシュの『101』は、Leeのブランドを象徴するアイテム。履きこんで洗濯を繰り返すことで、自分だけの色落ちを楽しむことができる。
丈夫なデニム生地を使用しているため、末永く愛用することも可能だ。

— 普段のファッションはどんなスタイルですか?

アサノ:基本はグランジですね。

ヨシダ:俺は……よく分かんない(笑)。いつの間にか白ばっかり着るようになってました。一時期はヒッピー感が好きでブーツカットを穿いていたりもしましたけど……。たしかに迷ってましたね。Jim Morrison(ジム・モリソン)に憧れて革パン、革ジャンだったときもあるし(笑)。今は”白”って感じです。

— デニムを穿くことは?

全員:めっちゃ穿きますねぇ。

モリタ:デニムはものすごい買ってます。俺はホント、デニムとCONVERSE(コンバース)ばっかり。

ヨシダ:1本あげたよね? 『101』のリジッドを買ったんですけど、サイズが合わなかったんでケンジにあげたんですよ。

アサノ:もう入らないけどね(笑)。

— TENDOUJIはグランジっぽさと、その前の時代の明るい時代の雰囲気を矛盾なく融合させているのが面白いと感じたのですが。

アサノ:もちろん時代的な矛盾は理解はしているんですけど、体感はしていないので、豊かさとか貧しさの差で捉えていないっていうのはあります。リアルタイムで体感していたらやることが変わるんでしょうけど、そこを通過していないから、今、自分がやってることをおかしいとは思わないんですよね。

— そこがTENDOUJIのオリジナルだと思います。

アサノ:だから、意識的にはちょっとややこしいバンドだと思うんですよね。2010年代に入ってからはさらにCDが売れなくなって、音楽業界的には暗くなってると思うんですけど、僕はライブハウスにも行かない人間で、それこそ自分のライブが初めてのライブハウスだったので、現場の暗さを全く知らない。「1990年代にはCDが売れていた。音楽=売れる」っていう当時の感覚でバンドを始めちゃってるから、今、こういうオルタナみたいなことをやっていても金持ちになる可能性を信じてるし、否定されてもあんまりそれを理解できないんですよ。

— 先ほど「ぼんやりとした目標」と話していましたが、この先の目標はありますか?

モリタ:やりたいことはたくさんあるんですけど、なかでも『FUJI ROCK FESTIVAL』のグリーンステージに出演したい、そういうバンドになりたいっていうのは強く思うようになりましたね。 日本を代表する……じゃないけど、そういうオルタナティブなバンドになりたいと。今は日本で英語の歌詞で演ってるバンドが減ってきてますが、それっていろんな壁を感じたからだと思うんです。でも、俺らはこのまま行けるところまで行きたい。日本のいろんな人に知ってほしいから、そのためにも『FUJI ROCK FESTIVAL』のグリーンステージに立つことが目標ですね。

アサノ:もちろん、武道館でも演りたいですけど、バンドのイメージとかマインド的には『FUJI ROCK FESATIVAL』のグリーンステージですね。僕らが出たときに海外のオーディエンスが「あぁ、そうか。FUJI ROCK FESTIVALって日本のフェスだし、TENDOUJIって日本のバンドだよな」って思ってもらえるようになりたいというか。

— いよいよ2020年の1月からはワンマンツアーが始まりますね。

アサノ:東京はLIQUIDROOMなんですが、今まででいちばん大きい会場ですし、ワンマンでやったことがない会場ばかりなので楽しみですね。今年はフェスもいろいろ出演させてもらいましたが、今はそのタームが終わって、バンドとしてもライブのあり方を考えている時期なので、そういったものが出るツアーになるんじゃないかと思います。

モリタ:今年はフェスにたくさん出ましたけど、写真や動画の撮影を禁止するイベントが多くて、それがすごく嫌だったんですよ。だから今回は、迷惑さえかからないようにしてくれれば動画撮影もOKなフリースタイルな場所にしたいんです。で、最後はお客さんが撮った動画で何か作ろうかと。

TENDOUJI
2014年、中学の同級生で結成。自主レーベル・浅野企画を設立し、これまでに4枚のEPと1枚のフルアルバムをリリース。類まれなメロディーセンスと1990年代のオルタナシーンに影響をうけた爆発力のあるサウンドを武器に、全ての会場をハッピーなグルーヴに包みこむ4人組バンド。2018年には『RUSH BALL』、『BAY CAMP』など国内フェスのほか、アメリカ最大級のフェス『SXSW』にも出演。2019年には、『ARABAKI ROCK FEST.19』、『VIVA LA ROCK 2019』、『COMING KOBE』、『百万石音楽祭 2019』など大型フェスに続々と出演を果たし、グラスゴーの至宝バンド・TEENAGE FANCLUBの来日公演のサポートアクトも務める。また、9月には、TENDOUJI Presentsの自主企画『MAKE!TAG!NIGHT!!! vol.3』を、POLYSICS、崎山蒼志を迎えてLIQUIDROOMで開催。11月6日に1stシングル””COCO”を発売し、タイで撮影したMVも話題に。
https://thetendouji.com/

TENDOUJI TOUR PINEAPPLE 2019-2020

前半戦として8都市を巡る『TAIBAN 2019』では、ゲストとしてスカートやtricot、ドミコなどが登場。そして、後半戦となる『ONEMAN 2020』では6都市を巡り、7都市目となるツアーファイナルの東京はLIQUIDROOMで開催される。

TENDOUJI ”COCO”

TENDOUJIとしては初のシングルとなる本作。CDのほかに、7インチアナログ盤とツアー会場限定発売となるカセットテープの、全3形態をリリース。

税抜価格:1,200円(CD)、1,600円(7インチ)、1,500円(カセット)
■収録曲
01.COCO
02.Magic Hour(※7インチ盤は未収録)
03.TIME AFTER TIME
■収録曲
01.COCO 02.Magic Hour(※7インチ盤は未収録) 03.TIME AFTER TIME
Photo:Shota Kikuchi | Styling:Hisataka Takezaki | Hair&Make-up:Masaki Takahashi | Model:TENDOUJI | Text:Yuzo Takeishi | Edit:Atsushi Hasebe、Nobuyuki Shigetake

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