WORK WEAR
第2次大戦において資源に乏しい日本が、あらゆる国民に鉄の供出を命じたことはよく知られているが、圧倒的な生産力と物量を見せつけてきた大国、アメリカとて無傷とはいかなかった。1942年、戦時製品監督局(W.P.B.)は、衣料品に用いる素材や金属などの部材簡素化を国内企業に命じた。リーは早くから軍へワークユニフォームを納入してきた実績から政府とも太いパイプがあっただろうが、そうした背景を持つリーですら物資統制は不可避だったのである。そこに産み落とされたのが、ヴィンテージでも現存数の少ない"101 カウボーイ"ジャケットの「大戦モデル」だ。戦前モノと大差がないように見えるが、ディテールを詳らかにすれば違いは歴然だ。"COWBOY"の刻印入りボタンはメッキを省いた汎用月桂樹ボタンに。ワークウェアであることを誇示するトリプルステッチはダブルステッチに。胸ポケットのフラップは縫製工程及び難易度を軽減すべく丸みのある形状に。そして古典的なバックルバックはリヴェットとプリーツを残して消滅する。この特異なディテールがリーを象徴する左綾デニムではなく、1944年頃まで採用された右綾デニムと共存することが、大戦モデルをして別格と言わしめる所以。そんな幻のジャケットを復刻した。
101J
胸ポケット
なだらかな丸みを帯びた形状に変更されたポケットフラップ。ポケット口とフラップの両方に銅製のリヴェットが打たれた頑丈なつくりは機能として不可欠と主張し、それが認められたのか、統制の対象とならずに済んだ
背中プリーツ
本来はバックルバック仕様の背面には調整用のプリーツが設けられている。しかしストラップ&バックルを省略せざるを得なくなったため、ストラップを固定するリヴェットとプリーツが残るという特異なデザインに
フロントボタン
前合わせ及び胸ポケットに使われる月桂樹ボタン。物資統制の一例として、ミリタリー衣料に採用されたものを"汎用品"として使用することを余儀なくされた。ツープロングのS字ワイヤー入りで堅牢。操作性に信頼がある