今や旧き良きアメリカの象徴にして牧場経営や酪農業に従事する人々の総称ともなったカウボーイながら、かつてその意味合いはやや毛色の異なるものだったと言われています。

19世紀半ば頃にアメリカ東西を結ぶ大陸横断鉄道が開業すると、成熟した東部市場やゴールドラッシュに沸く西部市場に向けた物流の中継地として、イリノイ、インディアナ、アイオワ、カンザス、ミシガンといった中部エリアに多くの資材が集められました。 カウボーイは当初、そんな中部エリアへ家畜や資材を移送する人々を指し、彼らは定住を好まず幌馬車を連ね何日にもわたる過酷なロングドライブを重ねていました。

そんな元祖カウボーイたちが目をつけたワークパンツがLeeだったと言われています。 ブランド最初期に開発された8オンス仕様のサスペンダーパンツ〈Lee ダンガリーズ〉の堅牢性にいたく惚れ込み、口コミによってカウボーイたちにも急速にシェアを広げていったのです。

そして、当時の技術を結集して開発され、1924年に〈Lee COWBOY〉がデビューを迎えました。Leeの代名詞として今日まで続くデニムパンツ〈101〉の起点にして、世界で初めてカウボーイの名を冠した〈Lee COWBOY〉には、他モデルとの差別化を図るべく〈Lee COWBOY〉の名が刻印されたドーナツボタンが採用され、多様なニーズに応えられるようにシンクバッチと呼ばれるウエストアジャスターとベルトループをともに備えているのが特徴的です。 また、通称"ヘア・オン・ハイド"と呼ばれるハラコ革を用いたレザーパッチも代表的なディテールのひとつとして人気を集め、デニム生地もより堅牢性に優れた13オンスへと進化していきました。

1926年、防縮加工を施した世界初のジッパーフライモデルをリリース。引き続き好評を博し、順風満帆に思われたものの、1929年に起こった世界恐慌がアメリカ経済にも暗い影を落とします。煽りを食った多くの牧場主たちはゆとりある東部の富裕層たちに休暇を牧場で過ごしてもらうようデュードランチという言わば牧場テーマパークを画策します。それまでワークウェアというイメージが強かったデニムが、カウボーイというライフスタイルへの憧れとアメリカ独自の郷愁感が相まって、牧場で余暇を楽しむ際のコスチュームへと進化していったのです。

1939年に勃発した第二次大戦を機に、アメリカのライフスタイルは大きく変貌していきました。大量消費社会の到来、近代化が進むとともに、ユース世代の間ではポップカルチャーが胎動し初め、ロックンロールに紐解くロカビリーなどの族文化が台頭。 カウボーイがより前時代的な郷愁の対象へと移り変わる中、Leeはそんな気運にもいち早く対応し、戦時中にあたる1944年頃〈Lee COWBOY〉から、より広義な意味合いを持たせた〈Lee Riders〉に名称変更。ヒップポケットのアーキュエイトステッチを今日まで続く通称レイジーSへと刷新することで戦後ユース世代にも多くのシンパを獲得していったのです。

Read more