WORK WEAR
人や物資、情報の往来が自由であることが、近代国家の指標の一つだった20世紀初頭。広大な土地を持つアメリカ合衆国では鉄道網の充実と、その安定した運行に心血を注いでいた。"Lot.91-J ロコジャケット"は早馬がごとく機関車を駆って辺境に「文明」を運ぶ時の花形職業、鉄道労働者に向けて1921年に誕生した。列車の運行に不可欠な懐中時計を収納するウォッチポケットや時刻表を収納する左身頃内側のタイムブックポケット、内側に補強布を充てた大型ポケットなどを装備し、ジェルトデニム――1925年にリーが開発した、軽量かつ耐摩耗性に優れた11.5オンスデニム――や強固なトリプルステッチで仕立てたその姿は、火の粉や煤を浴びて汚れながら凛としたレイルロードワーカーの正装そのもの。動きやすく堅牢な91-Jの評判は鉄道関係以外にも瞬く間に広がったことは至極当然で、全米のブルーカラーに浸透するにはさほど時間はかからなかった。結果、同ジャケットはワークウェアブランド=リーの看板を背負って1980年代までラインナップされることとなった。その絶頂期ともいえる1940年代に生産されたヴィンテージピースを生地から縫製、ディテール、ハードウェアに至るまで忠実に再現した。
91-J 40s model ¥33,000
ラベル
背景のデザインから「ハウスマークタグ」と呼ばれる織りラベルは'40年代中期まで採用される。その中でもロゴの"e"が水平となった、戦中まで使用されたタイプを再現。縮率が1%未満であることもアピールしているのが判る
ボタン
厚手のグローブを着用した状態や片手での掛け外しを容易にすべく、トップ部分が可動式となった「首振りボタン」をフロントとカフスに採用。ボタン表面にはロゴの"L"が長い、通称ロングLの刻印が打たれている
ユニオンチケット
1917年に全米衣料労働者組合(ユニオン)を受け入れたLeeの製品には組合員が作ったことを証明するチケットが縫い込まれていた。搾取が日常だった同時代、これは画期的な社会的行動で、全米の新聞広告でも喧伝された