WORK WEAR
第二次大戦によってアメリカの企業各社は、軍需品供給を最優先とした生産体制を敷いていたが1945年の戦争終結をもって、いよいよ一般市場向け生産ラインの立て直しに尽力することとなる。H.D.Lee 社もまたアメリカ軍に各種ユニフォームを納入してきたが、新たな時代の幕開けとばかりに工場をフル稼働させ、社内は熱気に包まれていた。彼らが最初に着手したのが、戦前から牧童たちの贔屓を受けていた定番シリーズ"COWBOY"の再構築であった。とりわけ政府による物資統制令が解かれたのを機に、同シリーズを"RIDERS"へと昇格することへ心血を注いだ。しかしながら急激な時代の変革は時として混沌を生むことも少なくない。本作はまさにその混沌の最中に産み落とされたアーカイヴピースを復刻したモデルとなる。フロントフライはトップにCOWBOY の刻印入りドーナッツボタンが打ち込まれており、ウエストバンド内側中央に斜体"e"のロゴを用いた戦前からの織りラベルを冠する。しかしながら生地は戦前・戦中までの右綾ではなく左綾デニムを採用するなど、新旧のディテールが混在しているのである。過渡期ゆえの特別な存在。それが我々をより興味深いアメリカンヴィンテージの世界にいざなってくれるのだ。
COWBOY 101 1945 model ¥28,600(taxin)
セルビッジ
旧式の力織機による13 3/4ozの左綾デニム。この時代は狭幅の織機を使用しているためアウトシームは両耳仕様だ。左綾デニムは雨が降ったような線状の色落ちが特徴である
クロッチリヴェット
生地を重ねて縫い合わせるクロッチ部は運動量も多いため、補強のリヴェットが打たれる。リヴェットの先端はサドルや家具を傷つけないよう、ハンマーで潰されている
センター赤タグ
通称"センター赤タグ"と呼ばれる織りラベル。ロゴは"e"が傾斜した、戦前からの古いフォントを採用している
トップボタン
戦前のCOWBOYシリーズから使用されてきた刻印入りドーナッツ型のトップボタン。RIDERSに移行した後もストックがあったためか、暫くの間も、このボタンが使用される